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#01

うつわ

TEA BOWL

「茶会で出会う茶碗は、色も形もさまざまです。毎日ごはんを食べるための飯碗のことも「おちゃわん」と言いますが、茶会で使う茶碗は、お茶を点てるために作られています。初めての茶会では、触れることさえ、ドキドキしてしまうかもしれませんね。両手で大切に扱うように心がけましょう。まずは、主茶碗、つまり主役として登場する機会の多い、代表的な茶碗の形と名称を紹介します。黒楽(くろらく)茶碗、斗々屋(ととや)茶碗、呉器(ごき)茶碗、赤楽(あからく)茶碗、沓(くつ)茶碗、塩笥(しおげ)茶碗――。くつのような形だとか、塩の壺を茶器に見立てたとか、それぞれにユニークな物語や長い歴史、ちょっとした決まりごとがある、特別な茶碗です。また、お茶をしていると季節をとても身近に感じるようになります。汗ばむような夏の日、ガラスの茶碗が目の前に置かれると、それだけで涼しさを感じます。ガラスだから夏にしか出番がないかというと、そうでもありません。例えば、クリスマスに赤いガラスの茶碗が出てくると、きっとうれしい気分になれますね。動物や植物、文様などが自由に描かれている絵付けの茶碗も、楽しいです。「見込み」と呼ばれる内側に仕掛けがあるものも多く、隣の方の茶碗まで、つい拝見したくなってしまいます。現代作家さんの手がける作品もあります。現代の茶碗も、長い年月を経ると「あぁ、令和の時代のお茶碗ね」と言われるのかもしれません。まずは自分が好きなもの、心に響くもの、そういった茶碗でお茶の時間を誰かと共にする。ただ、そんなことを楽しめたら、それが茶道の始まりだと思います。」

梶 裕子

Yuko Kaji

京都女子大学文学部国文学科卒業。裏千家直門。茶名は梶宗裕。冷泉家和歌会において和歌を学ぶ。1990年、南禅寺参道に「うつわや あ花音」を開店。現代作家の作品を扱い、世界へ現代の用の美を提案。現代の茶箱の展覧会、茶会も開催。旅館客室アート、レストランのうつわの監修も手掛ける。令和2年、「御菓子司 聚洸の源氏物語」(光村推古書院)を上梓。夫は梶古美術店主・七代目 梶高明氏。

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